「発酵」と「腐敗」。
似たような言葉ですが、意味は大きくことなります。人類は気候や風土をみきわめ、食品を保存したりよりおいしくいただくために、上手に「微生物」の働きを活用してきました。
とはいっても、普段はそれを特別意識することはありません。
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しかし小泉武夫さんの本を読むと、その神秘的な発酵の宇宙を旅することができるのです。
小泉さんは発酵・醸造学を研究する農学博士。これまでに、約百四十冊の本を出版していますが、特に定評があるのは、文字だけとは思えないほどリアルな食エッセイです。
たくさんある単著の中から、今回は、特に迫力満点の二冊を紹介しましょう。
『くさい食べもの大全』(東京堂出版)
著者みずからが、世界中の「くさい食べもの」を味わい紹介している一冊。納豆や、チーズなどのなじみの食品はもちろんですが、鴉、蛇、昆虫など、ほとんどの日本人は、一生に一度も食べることなく終わるであろう生き物の、味や食感について熱く語る深い内容です。そして単なる感想にとどまらず、食品の生まれた背景や各国の文化に触れてあり、雑学書としても楽しめます。
ページをめくるたびに匂いと臭いが交差する、密度の高い世界が広がります。
『猟師の肉は腐らない』(新潮社)
多忙な現代人である、作者が、山奥で暮らす旧友の猟師を訪ねて行くノンフィクションですが、ファンタジーさながらのおもしろさ。電気、水道のない、ほぼ自給自足の生活模様や、脚長蜂に刺されたときの対処法は、あまりにも現実離れしていて、思わず何度も、鼻をつまみたくなりました。
また、打ち殺したイノシシに戒名をつけて供養しているエピソードからは、自らの生命を維持するために他の命をいただいている、おごそかな想いが伝わってきます。
食べることは、生きること。
こんなコピーがありましたが、小泉さんの著書を読むと、生命力あふれるダイナミックな地球の一面に触れることができます。
この記事を書いた人
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82年岡山県玉野市生まれ。同市在住。歌誌「短歌人」に出詠中。
新聞・雑誌の読者投稿を経て、2014年から、ライターとして活動開始。
短歌実作の話をすると、某読者様に「与謝野晶子みたい」と言われました。しかし、作品ではなく、外見のことだ判明して撃沈。以来、自称ニューハーフ顔だと信じこみ、たくましい髪質と骨格を、カバーしながらも、生かす美容と、ファンションを研究中です。
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