(出典:http://www.ted.com/talks/dan_pink_on_motivation)
(日本語訳をつける場合は、動画右下のタブからjapaneseを選択)
‘self-development’ 日本語では‘自己啓発’と言いますが、10代の頃と違って内面も磨いて人として上を目指すことへ興味が向くのが大人女子時代なのではないでしょうか。
Lilcono(リルコノ)ライターのるぃです。
そこで皆さんにご紹介したいのが、世界を率いるリーダー達、最先端を研究する学者達が誰にでもわかる言葉で面白楽しくプレゼンを行うTEDという世界的に講演会を主催するグループ。
なんと直に出席するには約75万円という年会費を払わなければいけないという、この世界の英知を結集したプレゼンテーションが公式サイトで無料公開されているというのだから主催者の懐の大きさがうかがえます。目からうろこのプレゼンが転がっているこの宝庫からお勧めをご紹介しましょう。Lilcono(リルコノ)読者の皆さんの内面に響く何かを得られるでしょう。
やる気の謎
キャリアアナリストのダニエル・ピンクのプレゼンから今回は「やる気」が必ずしも金銭で買えないという科学を見てみましょう。
今の世の中、雇用者に良い働きをしてもらおうと思えばボーナスを出したり、ポジションだったり、何らかの成功報酬を与えればよいというのがビジネスの世界の通念です。
ここで心理学者によって1945年に実験された「ロウソクの問題」というのを見てみましょう。
被験者を部屋に入れてロウソクと画びょうとマッチを渡してこう言います。
「テーブルにロウがたれないようにロウソクを壁に取り付けてください。」
さてあなたならどうするでしょうか。多くの人は画びょうでロウソクを壁に留めようとします、が、うまくいきません。マッチの火でロウを溶かして壁にくっつけようというアイデアを思いつくも、これもうまくいきません。
5分から10分もすると、大抵の人は答えを見つけます。
キーとなっているのは物がもつ機能に対する固定概念を乗り越えるということです。あの箱を最初に見たときに単に画びょうの入れ物だと思います。しかし、別な使い方をすればロウソクの台になるということです。これが「ロウソクの問題」です。
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次にこの「ロウソクの問題」を使って行った実験を紹介しましょう。現在プリンストン大学にいる科学者は参加者を集めてこう言いました。
「この問題をどれくらい早く解けるかを計ります。」
1つのグループには、この実験の目的はどれ位時間がかかるのか平均時間を知りたいと伝えます。同時にもう1つのグループには上位に入ったら金銭の報酬をあげますよと提示します。
報酬が提示されたグループがどれ位早く問題が解けたかというと、
答えは、・・・3分半も余分に時間がかかりました。
この実験は40年に渡り続けられていますが、答えは同じ。報酬を用意したら全く期待したのと反対の、思考は鈍く想像力は阻害されるという結果になるのです。この「これをしたら、これが貰える」というやり方は、状況によっては機能しますが多くの場合うまくいかないどころか害にすらなります。そしてこれは最も無視されている発見の1つです。
外的動機付けは単純作業にのみ有効
ダニエルは、科学が解明したこととビジネス世界で実行されていることに食い違いがあると言います。
ビジネスの社会でのシステムは未だにもっぱらアメとムチ方式に頼っているのです。しかし21世紀の世界ではこの機械的な罰と褒美のアプローチは機能しないのです。
それはなぜでしょうか。
今度は同じ実験を行い、報酬を与えたグループが明らかに勝ちました。
箱に画びょうが入っていなかったら問題はバカみたいに簡単になるからなのです。
つまり単純なルールと明確な答えがあれば、報酬を与えることは視野を狭め心を集中させることができとても効果的ということです。しかし、本当のロウソクの問題では答えが目の前に転がっていません。周囲を見回す必要があります。その際に報酬は視野を狭くし私達の可能性に限界を作ってしまいます。こういった単純作業は簡単にアウトソーシングでき、自動化できます。つまりは人でなくともソフトウェアの方が早くできます。
ご自身の仕事を考えた時、直面する問題は明確なルールと1つの答えがあるような問題でしょうか、それとも右脳的で創造的に考える能力が必要でしょうか。おそらくルールは曖昧で答えが定まっているようなものではありません、答えがあるとしてですが。
アメとムチに替わる新しい方法
上記のようにやる気を科学した結果によりダニエル・ピンクはこのように言います。この世界的経済の窮地に及んで、時代遅れなやり方で多くの組織は決断を行っています。昨今の答えのないタスクに高いパフォーマンスを求めるならこんな方法はやめるべきです。つまり、重要だから、好きだから、面白いから、大切だと思えることの一部を担っているから、といった内的動機付けによる方法が有効なのです。
かのGoogle社でエンジニアは仕事時間の20%を何でも好きに使っていいというシステムを始めたことで有名です。そしてGmailやGoogle Newsなど、新製品の半分近くがこの20%の時間から生まれているのです。
他の例では、90年半ばにMicrosoft社がEncartaという百科事典を何千人というプロにお金を払って記事を書いてもらい予算と納期の中で仕上げました。何年か後に、誰にもお金を支払わず希望者に楽しんで書いてもらうという百貨辞典、Wikipediaのモデルが勝つと誰が思ったでしょう。
マネジメントの主軸となる3本の軸
1、自主性:自分の人生自分で決めたいという欲求
2、成長:自分にとって大切なことについて上達したいという欲求
3、目的:自分のためだけよりも大きな何かのためにやりたいという切望
これらの内的動機付けは成功報酬といった外的動機付けを打ち負かすのです。高いパフォーマンスの秘訣は、自分自身のためにやる、それが重要なことだからやる、という見えてない内的な意欲にあるのです。何より大事なのは、私達がこのことを知っているということ。そしてこのアメとムチ社会を脱却すれば、多くの組織を強くし、たくさんの各々が持つロウソクの問題を解き、経済を立ち直らせ、強いては世界を変えるかもしれません。
この記事を書いた人
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英語科卒。百貨店と貿易物流会社を経て、カナダ・バンクーバーにてマーケティングとギャラリーマネージャーを経験。
帰国後、某大手企業にて翻訳/通訳/事務を通して日本と米国を行き来。
Foodieとしてレストランやカフェに通うと共にアラサーの体をいたわりホームクッキングにも精を出している。
安くて良いものを探す関西人魂は海外でも健在。海外から様々な切り口でライフスタイルを執筆。
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