こんにちは、Lilcono(リルコノ)ライターのmiho +です。
品川駅から徒歩15分。都心の閑静な住宅街の中に“大人のためのテーマパーク”が現れました。
入口はなんと、オオカミの口。
この大きな口の中にある鏡のドアを抜けると、まるでリアルなドラゴンクエストのような冒険が始まります。
・・・実はすべてアート。
1930年代に建設された歴史的建造物、原美術館で開催中の展覧会なんです。
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冒険は、こうして進む
本展のインスピレーション源は、15世紀末の古典文学『Hypnerotomachia Poliphili』。和訳すると、「ポリフィーロの夢の中の恋の戦い」。主人公ポリフィーロが、夢の中で恋人ポーリアを求めて旅をするステップが、館いっぱいを使って表現されています。
しとめられたユニコーンは立体作品に、道中の紆余曲折はイラストになって迎えてくれます。
そしてフィナーレには、最後のボスとの戦いが。こちらは「AR(拡張現実)を用いたマルチメディアインスタレーション」なるもので表現されています。
これが、驚愕のおもしろさ!
どんな作品なのかというと、要は、映像の中に自分自身が映し出されるんです。
スクリーンの正面に立つと左の写真のように自分自身が感知されて、数秒後、ポリフィーロに変身! 下の写真のように甲冑を着たキャラクターになります。
その後は実際に体を動かして、向こうからやってくる敵をしとめる。
わたしがボールを投げるように右手を振れば、甲冑に覆われた自分は敵にめかげて矢を投げる。
戦いに勝利した後、拳を突き上げてみれば、映像の中のわたしは全く同じ勝利のポーズをとる。
これだけのテクノロジーに圧倒されつつ、も〜う、とにかく純粋に楽しすぎる!と大はしゃぎ。
今月のArt ♥ Eye:“かわいい”の先にあるもの。
そんな楽しさもこの展示について思案する上で重要なキーになりますが、観賞後、なによりも強く語りたいと思ったのは“かわいい”についてでした。かわいい、かわいい、かわいい。
館内をめぐる間、心の中で何度唱えただろう「かわいい」と。
階段の昇り口やドアのそばに冒険の順序(道順)を示してくれる妖精がいたり、愛嬌のあるキャラクターがそこかしこにいたり、ドアの扉までデコレートされていたり。
とにかく、進むほどに「かわいい!」の歓声が止まらない。
でもふと思ったのです。
「それはどんなかわいさなの?」と聞かれたら、うまく答えられないことに。
この展示は、いわゆるガーリーとは異なります。
入口になっているオオカミ以外は映像作品も含めほとんどがモノトーンで、どこか男性的な印象。
絵のタッチは日本的なかわいさではなく、西欧らしいニュアンス。
こんな風に、この展示について言葉を重ねることはできる。
でも、それらはいずれもわたしが唱えた“かわいい”を、的確に言い得てはいないように思うのです。
たぶん、「このアートはとてもかわいい」という表現じたいが正確ではないのかも。
そうではなく、このアートに向き合ったときに感じたものが、かわいいと表現するときの感覚と似ているだけなのかも。
“かわいい”は、心の中の音。
90年代のガーリーや21世紀のアニメ、アイドルなどの時代を経て、“かわいい”はいろんな形でいろんな人に考察されてきました。
「自分よりも弱いもの、小さいものを愛でるときに使う言葉だ
とか。
「他者と共感できていると認識するための言葉だ」とか。
それらは確かにその通りだと思いますが、おそらく“かわいい”とは、心の中に突然生まれたワクワク感が、瞬発的に口から出たときの音なのだと思うのです。
ポン!と弾むように。
パン!とはじけるように。
全身を動かして最後のボスを倒す過程は、大きな“かわいい”の音の連続でした。
体を使うことで、ポン!とパン!が全身に共鳴するようで・・・。
そんな“かわいい”は、お庭の一角にも。
ひとまわりすると、たくさんの音でいっぱいになる。
そんな幸せな音でいっぱいになれば、きっとあなたも、心も体も驚くほど軽やかになっているはずです。
ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢
会期:〜6月29日(日)
会場:原美術館
開館時間:11:00〜17:00(水〜20:00、最終入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
入場料:1100円
http://www.haramuseum.or.jp/
この記事を書いた人
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女性誌の編集から現在はフリーの編集/ライターとして活動。
女性誌時代には、取材300回(もっとかな?)、離島取材4回、
シェフから俳優までインタビューは50本以上。
・・・それでも緊張やウッカリの抜けないおとぼけキャラです。
モットーは「見えないものを大切に」きっと誰もがもっている、
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