こんにちは、Lilcono(リルコノ)ライターのmiho +です。
日常、美術館やギャラリーなどに足を運んでいますか?
あるいは、頭の中をからっぽにするひととき、ありますか?
ニュースはTwitterで調べて、友だちの近況はFacebookで確認して。
わからない単語はググって、困ったら知恵袋で・・・。
日常の疑問にはたいてい答えが提示されていて、
新しいものも常にあふれている今。
そんな毎日に必要なのは、頭で考えることではなくて、
むしろ逆に、頭の中をからっぽにすることなんじゃないかと思っています。
だって、頭で考えることは、たいてい想像しうることだから。
でも、心で感じれば、ときに想像を越えるナニカに出会えることがある。
そんなことを思いながら、これから月に1度、「Art ♥ Eye」をお届けします。
熱量に満ちたアートの中に、
あなたの日常をぐるりと揺るがすきっかけがあることを願って。
* * * * *
初回はこちら。
2月22日にオープンした「写真集食堂 めぐたま」。
お料理は、割烹着を着た“おかあさん”たちが
オープンキッチンで作っているのだけど、一汁三菜の定食のほか、
ビールが一瞬でなくなっちゃうようなお酒のアテまであって、
すっと肩の力がほどけていくようなおいしさが楽しめます。
ん?食堂?アートじゃない?と思われるかもしれませんが、
実はこちら、壁全面にアートがびっしり。
天井まで、ほら!
店名にもある通り、こちらはすべて写真集。
写真評論家・飯沢耕太郎さんの私物なのだそうで、1930年代〜2000年の国内作家のものや海外のもの、ネイチャーなど多彩なラインナップ。
なんとこれら全部、自由に閲覧できるんです。
篠山紀信が撮った宮沢りえから、世界最古の写真集といわれる
「The Pencil of Nature」の復刻版まで。
それこそ図書館も顔負けのバラエティ豊かな約4500冊の中から、
私が手に取ったのはこちら。
荒木経惟+森山大道『新宿』。
2005年に東京オペラシティ ギャラリーで開催された
「森山新宿荒木展」とタイミングを同じくして発行された1冊。
二大巨匠がスナップした、めくるめく新宿。
上半身が、ぞわっとする。
わたしにとってここに写されている光景は、
どこかの目的地に向かう通過点として、
どんどん流れていっている見慣れたワンシーンです。
行き違う人。視界を横切る建物、看板。
いつもはただ、流れているだけの平面的なものたち。
でもこの1冊には、本来そんな中に密集しているはずの
ストーリーまで写し出されているようでした。
しかめっ面をしていたり、どこか呆然として見えたり。
悲しみだったり悩みだったり、喜びだったり。
ひとりひとりの微細な表情には過去や記憶がにおっていて、
立体感をもって迫ってくる。
皮肉ですね。
日常で流れていっている新宿の景色は平面に見えて、
写真に映し出されている方が3Dに思えるなんて。
そういえば、「アレ・ブレ・ボケ」と称される作風で有名な
森山大道さんは、「自分を包む外界すべてはアクシデント」と言っていた。
「写真集食堂 めぐたま」の場所は、
渋谷・恵比寿・広尾の真ん中ぐらい。
家までの道すがら、いつもよりゆっくりとした目線を向けたくって、
その日は歩いて帰りました。
それでもまだなにかが足りない気がして、カメラのアプリを立ち上げた。
毎日目にしている目黒川の景色に、偶然にも、今まで見たこともない色。粗さ。
なんだか少し、ほっとしました。
この記事を書いた人
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女性誌の編集から現在はフリーの編集/ライターとして活動。
女性誌時代には、取材300回(もっとかな?)、離島取材4回、
シェフから俳優までインタビューは50本以上。
・・・それでも緊張やウッカリの抜けないおとぼけキャラです。
モットーは「見えないものを大切に」きっと誰もがもっている、
日々の中に潜んだタカラモノが見つかるよう、日常を彩るヒントをお届けします。
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